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名古屋地方裁判所 昭和55年(ワ)1981号 判決 1994年10月17日

原告

落合昭人

糟谷一郎

スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会

(旧名称 全国石油産業労働組合協議会スタンダード・ヴァキューム石油労働組合中京分会連合会)

右代表者執行委員長

中村勇

原告

スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会

(旧名称 全国石油産業労働組合協議会スタンダード・ヴァキューム石油労働組合エッソ名古屋支店分会)

右代表者執行委員長

中村和憲

右原告四名訴訟代理人弁護士

今井安榮

被告

エッソ石油株式会社

右代表者代表取締役

ダブリュー・アール・ケイ・イネス

右訴訟代理人弁護士

建守徹

佐治良三

太田耕治

渡辺一平

尾関孝英

建守徹訴訟復代理人弁護士

藤井成俊

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

1  被告が、昭和五五年二月一五日付で、原告落合昭人に対し同月一八日から同月二二日まで五日間の出勤停止を命じた意思表示、並びに原告糟谷一郎に対し同月一八日から同月二二日まで及び同月二五日から同月二六日までの七日間の出勤停止を命じた意思表示は、いずれも無効であることを確認する。

2  被告は、原告落合昭人に対し、一〇万二三三〇円及びうち六万三〇二四円に対する昭和五五年三月二六日から、うち三万九三〇六円に対する同年七月一日から各支払ずみまで、原告糟谷一郎に対し、一三万〇四九九円及びうち八万〇二七八円に対する同年三月二六日から、うち五万〇二二一円に対する同年七月一日から各支払ずみまで、いずれも年五パーセントの割合による金員を支払え。

3  被告は、原告スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会及び原告スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会に対し、それぞれ五万円及びこれに対する昭和五五年二月一五日から各支払ずみまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、雇用契約を締結していた株式会社から出勤停止処分を受けた従業員が、右処分の無効の確認とその間の賃金の支払を、右従業員が所属していた労働組合が、右処分が労働組合に対する不当労働行為であり不法行為に該当することを理由として損害賠償の支払をそれぞれ求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  被告は、昭和三六年一二月一一日、その前身であったスタンダード・ヴァキューム石油株式会社の分割により、モービル石油株式会社とともに設立された石油製品及び石油関連各種製品の製造・輸入・販売を業とする株式会社であって、昭和五七年三月一日にエッソ・スタンダード石油からエッソ石油株式会社へ商号を変更し、肩書地に本店を、全国各地に支店、営業所等を有しており、平成五年六月現在の従業員数は約一一五〇名である。

2  被告には、平成五年六月現在、エッソ石油労働組合(組合員数四〇四名、以下「エ労」という。)、スタンダード・ヴァキューム石油労働組合(組合員数五三名、以下「ス労」という。)及びスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(組合員数二四名、以下「自主労」という。)が存在する。

3  原告落合昭人(以下「原告落合」という。)は、昭和三九年二月一一日に被告に入社し、以後福岡営業所(現在は福岡支店)、東京本社での勤務を経て、昭和四八年四月以降名古屋支店に勤務していたが、昭和五七年九月三〇日付で業務命令違反を理由として被告から懲戒解雇の意思表示を受けた者である。

4  原告糟谷一郎(以下「原告糟谷」という。)は、昭和四二年四月一日に被告に入社し、以後大阪工業用製品支店、東京工業用製品支店などでの勤務を経て、昭和四八年二月以降名古屋工業用製品支店に勤務していたところ、昭和五九年七月二五日付で大阪支店事務所への進入、管理職への暴行傷害、業務妨害等を理由として被告から懲戒解雇の意思表示を受けた者である。

5  被告の昭和五四年六月一日改訂実施の就業規則(以下「規則」という。)には、次のとおり規定されている(<証拠略>)。

第六〇条(懲戒) 懲戒は次の四種とする。

第一号 譴責 始末書を提出させ、将来を戒める。

第二号 減給 始末書を提出させたうえ、労働基準法九一条の定める範囲内で減給する。

第三号 出勤停止 始末書を提出させたうえ、一か月以内出勤を停止し、その期間は欠勤として取扱う。

第四号 懲戒解雇 即時解雇する。

第六一条(譴責及び減給) 会社は、従業員が次の各号の一に該当するときは、その情状により譴責または減給に処する。

第一号 欠勤、遅刻または早退が多く、勤務に不熱心なとき。

第二号 会社に提出しなければならない諸届を怠り、または虚偽の届出をしたとき。

第三号 職務上の指示命令に従わず、職場の秩序をみだしたとき。

第四号 過失、怠慢または監督不行届により、事故を発生させたとき。

第五号 その他前各号に準ずる不都合な行為をしたとき。

第六二条(出勤停止及び懲戒解雇)会社は、従業員が次の各号の一に該当するときは、その情状により出勤停止または懲戒解雇に処する。

第一号 無届欠勤が引き続き七日以上に及ぶとき。

第二号 過失、怠慢または監督不行届により、火災、傷害その他重大な事故を発生させたとき。

第三号 業務上重大な機密を他に漏らしたとき。

第四号 故意に会社の設備、器具等を破壊し、または粗漏に取り扱ったとき。

第五号 職場の風紀または秩序を乱したとき。

第六号 譴責または減給に処せられたにもかかわらず、なお改しゅんの見込みのないとき。

第七号 履歴を詐って採用されたとき。

第八号 不正に会社の金品を消費し、または帯出しようとしたことが明らかなとき。

第九号 職務上の地位を濫用し、金品の贈与または供応を受けたとき。

第一〇号 第六一条のうち特に情状が重いとき。

第一一号 その他前各号に準ずる不都合な行為をしたとき。

6  被告は、昭和五五年二月一五日、規則六〇条三号に基づき、原告落合及び取下前相原告池田晃一(以下「池田」という。)に対しいずれも同月一八日から同月二二日まで五日間、原告糟谷に対し同月一八日から同月二二日まで及び同月二五日から同月二六日までの七日間の各出勤停止を命ずる旨の懲戒処分(以下「本件処分」という。)を通告した。

二  争点

1  原告の主張

(一)(1) 原告スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会(以下「原告連合会」という。)は、もと被告及びモービル石油株式会社の従業員によって組織された全国組織である全国石油産業労働組合協議会スタンダード・ヴァキューム石油労働組合(以下「全石油」という。)の下部組織である分会連合会及び支部の組織のうちの一組織を構成し(旧名称全国石油産業労働組合協議会スタンダード・ヴァキューム石油労働組合中京分会連合会、以下「全石油中京分会連合会」という。)、独自の規約、議決機関、執行機関を有し、個別要求に関する争議行為につき独自に決定をなす権限を有する労働組合であった。

また、原告スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会(以下「原告分会」という。)は、もと原告連合会の下部組織の一つを構成し(旧名称全国石油産業労働組合協議会スタンダード・ヴァキューム石油労働組合エッソ名古屋支店分会、以下「全石油名古屋支店分会」という。)、被告名古屋サービスステーション支店、被告名古屋管理事務所、被告名古屋工業用製品支店に勤務する従業員によって組織され、独自の規約、議決機関、執行機関を備え、独自の団体交渉権、争議権を有する労働組合であった。

しかし、昭和五八年(ママ)八月一九日から同月二二日まで開催された全石油の昭和五八年度第五九回定期全国大会及び本部役員選挙が正規に行われなかったため、全石油は消滅した。

そして、昭和五七年九月二五日、全国組織の再建を図ってスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(自主労)が結成されたことから、原告連合会は同日付で自主労に組織加盟し、原告分会も原告連合会に加盟していることから同時に自主労に加盟した。

原告連合会及び原告分会は、右自主労加盟にともない、その表示をそれぞれスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会、スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会に変更した。なお、右表示変更に際して、全石油中京分会連合会と原告連合会との間、及び全石油名古屋支店分会と原告分会との間に組織自体の変化はなく、組合員の構成も全く同一である。

(2) 池田は、本件処分当時、被告名古屋サービスステーション支店に勤務する従業員であり、原告分会の執行委員長の地位にあった。

原告落合は、本件処分当時、被告名古屋サービスステーション支店に勤務する従業員であり、原告分会の書記長の地位にあった。

原告糟谷は、本件処分当時、被告名古屋工業用製品支店に勤務する従業員であり、原告分会の執行委員でかつ全石油の本部副委員長の職を兼ねる地位にあった。

(二) 本件処分は、左記の理由でいずれも違法・無効である。

(1) 何人も自らが不利益な処分を受ける場合には、その処分に先立って処分事由に関し弁明の機会が与えられなければならないところ、被告は、本件処分に先立ち、原告らに対し、何らの弁明を求めることなく、突然懲戒処分を通告してきた。

したがって、本件処分は、弁明の機会を保障すべき適正手続に違反し、違法・無効である。

(2) 被告が本件処分の理由として掲げた事実関係には判然としないものが多く、また各事実と規則の各条項との関係も明確ではないなど、本件処分は極めて恣意的な理由のない処分である。

(3) 本件処分の処分対象となった原告らの行為は、いずれも原告連合会及び原告分会が組織として行った正当な組合活動ないし争議行為である。

(4) 組合員が、組合の組織決定に基づき、組合活動ないし争議行為として組合の行為を行った場合には、元来個別的労使関係において個々の事由について適用されるべき規則は、集団的労使関係の中で判断されるべき組合の行為に対してはその適用の前提を欠くものである。

したがって、本件処分の処分対象となった原告らの行為に対し、懲戒処分を規定した規則の規定を適用することは許されない。

(5) 本件処分事由は、原告らの原告分会内部での指導的、組織的地位をとらえ、これを非難の対象としている。

しかし、組合の組織決定に基づく行為に対しては、組合内部での地位に関連して責任を問われるべきものではなく、本件処分はこの点でも理由を欠くものである。

(6) 本件処分は、後記(三)のとおり、原告らの労働組合活動を嫌悪し、これに打撃を与えることを主たる目的としてなされた不当労働行為である。

(三) 本件処分は、組合活動を理由とした原告落合、原告糟谷及び池田ら組合員に対する不利益処分として、また原告連合会及び原告分会に対する支配介入として不当労働行為に該当し、不法行為を構成する(以下「本件不法行為」という。)。

(1) 昭和四九年六月、被告は、第二組合(エ労)を結成し、全石油の全国組織に対抗する分裂組織をもって全石油に対する組織解体攻撃を開始した。昭和五一年四月一九日の全石油組合員に対する刑事弾圧、これに引き続く同年六月七日の同組合員に対する不当解雇はその一例である。

(2) 被告は、昭和五一年六月、原告連合会の一機構である名古屋油槽所支部に対し組合員脱退工作を行い、また、同年九月には原告連合会及び原告分会の構成組合員五名に対し不当配置転換を行い、その後日常的に会社職制による右原告らの構成組合員への組合脱退工作、差別的人事評定、賃金差別を行った。

(3) 被告は、昭和五四年九月七日、これまで被告の要請のもとに築き上げられてきた労使慣行を一方的に破棄し、同年六月の被告のスキャップ行為批判等の団体交渉を継続中、何の理由もなく席を立って団体交渉を一方的に放棄し、退席した。これ以降、被告は、原告らの団体交渉申し入れを拒否し続けたのみならず、労働協約に違反し、労使慣行を無視し、原告連合会及び原告分会の争議行為を不当に妨害し、そのうえで本件処分を行った。

(4) 被告は、昭和五五年七月二五日、原告落合に対し、同年九月一日付をもって被告福岡支店へ転勤させると通告してきた。労働協約三六条五項及び同条覚書には、支部及び分会連合会三役(委員長、副委員長、書記長)の転勤を行おうとする場合には、被告は組合と十分誠意を尽くして協議をすべきことが定められている。原告落合は、原告分会の書記長であるとともに原告連合会の副委員長を兼ねており、右事前協議条項の適用があるにもかかわらず、被告は、これを行わずに突如前記のような配転を通告してきた。

これは、労働協約の協議条項に違反し、かつ原告連合会及び原告分会の本件処分撤回闘争中であることを知悉しながらなされたものであって、組合解体を目的とした一連の不当労働行為の一端に他ならない。

(四) したがって、原告らは被告に対し、次の請求をする。

(1) 原告落合及び原告糟谷は、本件処分の無効確認を求めるとともに、右各出勤停止期間中の未払賃金及び夏季一時金差額の合計(原告落合は未払賃金六万三〇二四円、夏季一時金差額三万九三〇六円の合計一〇万二三三〇円、原告糟谷は未払賃金八万〇二七八円、夏季一時金差額五万〇二二一円の合計一三万〇四九九円)並びにうち右各未払賃金に対する賃金支払日である昭和五五年三月二六日から、うち各夏季一時金差額三万九三〇六(ママ)円に対する夏季一時金支払期日である同年七月一日から各支払ずみまで、いずれも民法所定年五パーセントの割合による遅延損害金の支払。

(2) 原告連合会及び原告分会は、本件不法行為に基づき、これにより被った損害賠償として、それぞれ五万円の支払。

2  被告の主張

(一) 本案前の主張

全石油中京分会連合会とスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会、及び全石油名古屋支店分会とスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会とは、その組織人員及び組織人員数を異にする全く別の組織であって、その間に組織の継続性は存在しない。

したがって、スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会及びスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会が本訴の当事者となるためには、単なる名称の変更ではなく、訴訟手続上当事者追加または承継の手続きがとられなければならない。

本訴においては右手続きはとられていないから、全石油中京分会連合会及び全石油名古屋支店分会は、スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会及びスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会が新たに結成され、自主労に加盟した昭和五七年九月二五日をもって消滅し、当事者適格を失ったというべきである。

したがって、全石油中京分会連合会及び全石油名古屋支店分会の本件訴えは、いずれも却下されるべきである。

(二) 本案についての主張

(1) 本件処分の理由

(ア) 池田について

池田は、本件処分当時全石油名古屋支店分会の委員長であったところ、全石油名古屋支店分会は、本件処分までに被告の再三にわたる注意にもかかわらず、以下に記載のとおり、被告施設に対する違法なビラ貼り、業務妨害、被告の監督者に対する脅迫的言動等を繰り返してきた。

池田は、全石油名古屋支店分会の委員長として、右違法行為を企画、立案、指揮し、または自ら右違法行為に参加し、率先遂行してきた。

池田の右各行為は、いずれも正当な組合活動の範囲をはるかに逸脱した違法行為であり、規則六二条四号、五号、一一号に該当するものであるから、池田に対する本件処分は正当である。

<1> 全石油名古屋支店分会は、昭和五四年二月一六日から昭和五五年一月末までの間、再三にわたる被告の警告を無視して、合計七〇回以上にわたり、「沖田・・・圧殺」などと不穏当な内容、あるいは人名を黒枠で囲んだ内容のビラ・新聞折込広告等含め約一万枚にのぼるビラを被告諸施設に貼付し、特に昭和五四年一一月二〇日以降のビラ貼付には、特殊化学糊(強力接着剤)を用いて、被告諸施設を著しく汚損・損傷した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した(規則六二条四号、五号、一一号に該当)。

<2> 全石油名古屋支店分会の一部組合員が、昭和五四年二月一六日から昭和五五年一月末日までの間、被告の再三にわたる注意にもかかわらず、連日にわたり就業時間中にゼッケンを着用した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した(規則六二条五号、一一号に該当)。

<3> 全石油名古屋支店分会は、昭和五四年二月一九日以降、再三にわたる被告の警告を無視し、被告名古屋支店内において、再三ハンドスピーカーで大声を出しながらデモ行進をし、あるいは執務中の事務室内に向けてハンドスピーカーでがなり立て、個人中傷を行うなどし、被告の業務を著しく妨害した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<4> 昭和五四年四月一二日午後四時二〇分ころから、全石油名古屋支店分会員らは、被告名古屋支店内をハンドスピーカーで大声を出しながらデモを行った際、営業妨害をしないように注意した被告名古屋工業用製品支店長沖田光弘(以下「沖田支店長」という。)を実力で押し返し、更に、全石油名古屋支店分会員である増田民男は同支店入口から執務中の職場内に向かってハンドスピーカーでがなり立て、原告落合は「スト中だから業務妨害は当然だ」などと叫ぶなどして著しく業務を妨害し、またその際原告糟谷は、沖田支店長に対し、「三里塚の仲間を連れてきてメチャメチャにしてやるぞ」などと脅迫的言辞を弄した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮したほか、自らもその場において右行為を扇動し、指揮し、加担した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<5> 昭和五四年六月七日午前八時二〇分ころから、池田、原告落合、原告糟谷を含む全石油名古屋支店分会員の多数が、名古屋支店ビルの玄関前の階段に立ちふさがってピケを張り、被告監督者らが執務のために被告名古屋支店ビル内に入館することを五分間ないし二〇分間にわたって妨害したのみならず、被告名古屋管理事務所管理課長藤岡美博(以下「藤岡課長」という。)に対しては、その就労の意思表示にもかかわらず、午前八時二〇分ころから一時間二〇分にわたって物理的にその入構を阻止した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<6> 昭和五四年六月一五日午前八時四五分ころ、池田、原告落合、原告糟谷を含む全石油名古屋支店分会員数名が、被告名古屋支店ビル玄関前の階段中央部に座り込み、被告監督者らの入構を妨害した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<7> 昭和五四年九月以降、被告によって前記<1>のように貼付された違法ビラの清掃作業が行われた際、全石油名古屋支店分会員らがしばしば就業時間中に無断で職場を離脱し、清掃をしている被告監督者に対してハンドスピーカーで大声で嫌がらせを述べたり、梯子を利用して清掃作業をしている者に対しては、梯子を揺するなどして右清掃作業を妨害した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<8> 昭和五四年九月二一日午後五時三〇分ころ、全石油名古屋支店分会員らは、事務折衝と称して沖田支店長室に無断で乱入し、がなり立て、特に一分会員は「さあ早く事務折衝をしろ」、「明日、沖田の家の周りで三里塚の仲間を連れて行ってわめいてやるぞ」などと脅迫的言辞を弄した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<9> 昭和五四年九月二五日午前九時二〇分ころから四〇分ころまでの間、全石油名古屋支店分会執行委員河合勝、増田民男及び原告糟谷は、就業時間中であるにもかかわらず無断で職場を離脱したうえ、被告側事務折衝担当者名古屋工業用製品支店長代理佐野碵(以下「佐野支店長代理」という。)に対し、その顔面一〇センチメートルくらいのところで「事務折衝を早くやれ。何を言っているだ。」などと大声でわめき散らし、脅迫的態度で事務折衝を強要した。そして、池田及び原告落合は、途中からその場に来て、原告糟谷らの右行為を自ら扇動し、加担した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<10> 昭和五四年九月二五日午後六時ころ、全石油名古屋支店分会員数名が執務中の被告名古屋支店工業用製品支店事務室内に無断でドヤドヤと立ち入り、同事務室内にビラを貼付したのみならず、この行為を注意し「執務中であり、業務の妨害となるから、外へ出て欲しい」と言った佐野支店長代理を同分会員多数で取り囲んだうえ、「きさま、バカヤロー、ただではおかないぞ、きさまの家にも行ってビラを貼ってやるぞ」などと粗暴な言辞を弄して脅迫し、同日午後六時一五分ころまでの間多数の勢いをもって佐野支店長代理をつるし上げた。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条四号、五号、一一号に該当)

<11> 昭和五四年九月二六日午後五時五〇分ころ、全石油名古屋支店分会員は、全石油名古屋支店分会のビラ貼付があまりにもひどいためこれを注意をした沖田支店長に対し、「争議中だから、会社の建物を汚す、壊すはあたりまえだ」などと粗暴な言辞を弄してビラ貼付を続行した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条四号、五号、一一号に該当)

<12> 昭和五四年九月二八日午後六時二五分ころ、被告名古屋支店工業用製品支店事務室内において、佐野支店長代理と原告落合が事務折衝をしていたところ、池田を含む全石油名古屋支店分会員多数が執務中の前記事務室に無断で乱入し、佐野支店長代理の退去勧告を無視して約一五分間にわたって大声で騒ぎ立てたのみならず、同日午後六時四〇分ころ、前記事務室から退出しようとした佐野支店長代理の前に立ちふさがり、ハンドスピーカーを佐野支店長代理の面前に突きつけたうえ、「名刺にサインしろ。おまえは帰るのか、バカモン。事務折衝を拒否するのか。」などと罵詈雑言を浴びせるなどして約五分間にわたりその通行を阻止した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<13> 昭和五四年一〇月二九日午前八時五〇分ころ、池田、原告落合、原告糟谷を含む全石油名古屋支店分会員多数が被告名古屋支店管理事務所窓ガラスにビラを貼付し始めたことから、藤岡課長がその状況を写真撮影したところ、池田らは藤岡課長のいる前記管理事務所に大挙して押しかけたうえ、藤岡課長からカメラを奪おうとし、あるいは藤岡課長をキャビネットに押しつけるなどの暴挙に出て「バカヤロウ」などと口々に叫び、藤岡課長の机上、キャビネット、天井などにビラを貼付した。

池田は、右行為を全石油名古屋支店分会委員長として企画、立案、指揮し、自らも率先して遂行した。(規則六二条四号、五号、一一号に該当)

<14> 昭和五四年一一月九日午後四時三〇分ころ、全石油名古屋支店分会の多数の組合員は、全石油中京分会連合会との団交の会場から退出しようとした佐野支店長代理に対し、ドアの前に立ちふさがる、押し戻す、後から抱きかかえるようにするなどして、その退出を阻止した。

池田は、全石油名古屋支店分会委員長として、右行為を企画・立案・指揮し、自ら率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<15> 昭和五四年一一月三〇日午後五時三五分ころ、池田、原告落合、原告糟谷を含む全石油名古屋支店分会員多数が被告名古屋支店工業用製品支店内に無断で立ち入り、執務中の社員の頭上の天井などところかまわずビラを貼付して被告の業務を妨害したほか、右全石油名古屋支店分会員のうち、原告糟谷がビラを剥がそうとした沖田支店長の手をたたいて阻止し、増田民男が写真撮影した沖田支店長に顔面を極端に近づけて「フイルムを返せ」とわめき立てるなどの行為を行った。

池田は、全石油名古屋支店分会委員長として、右行為を企画、立案、指揮し、自ら加担した。(規則六二条四号、五号、一一号に該当)

<16> 昭和五四年一一月三〇日午後六時ころ、被告名古屋支店二階廊下において、池田、原告落合及び原告糟谷らが、ビラ貼付中の全石油名古屋支店分会員らにビラ貼りを止めるよう注意した沖田支店長に対し、「俺の後のビラをはがしてみろ、テメエは痛い思いをしないと判らんのか。コンカイ」など大声で叫びながら同支店長を挑発、威圧し、更に佐野支店長代理の発言に抗議すると称して、「明日家に行って談判する」などと同支店長代理を脅迫しつつ、再三の退去警告を無視して、同日午後九時一五分に至るまで、同支店廊下及び名古屋工業用製品支店内に滞留し続けた。

池田は、全石油名古屋支店分会の委員長として、右行為を企画、立案、指揮し、自ら率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)。

<17> 昭和五四年一二月七日午前八時五六分ころ、全石油名古屋支店分会員らが、沖田支店長室に無断で立ち入り、もっぱら同支店長を挑発、脅迫し、同支店長に対し嫌がらせを行う目的で同支店長の耳元でハンドスピーカーでがなり立てるなどの行為を行い、更に同日午後四時からの五分間ストライキに際し、全石油名古屋支店分会員多数が被告名古屋支店名古屋工業用製品支店内に乱入して、執務中の社員の業務を妨害することのみを目的としてハンドスピーカーでがなり立てる、ビラ貼付をするなどし、被告の業務を著しく妨害した。

池田は、全石油名古屋支店分会委員長として、右行為を企画、立案、指揮し、自ら率先して遂行した。(規則六二条四号、五号、一一号に該当)

<18> 昭和五四年一二月二〇日午後六時ころ、全石油名古屋支店分会員多数が、被告監督者または従業員の退出を妨げることのみを目的として、被告名古屋支店名古屋工業用製品支店入口付近にたむろし、右入口に糊の入った容器を置き、立ちはだかり、坐わり込むなどして、被告監督者らの退出を妨害した。

池田は、全石油名古屋支店分会委員長として、右行為を企画、立案、指揮し、自ら率先して遂行したのである(規則六二条五号、一一号に該当)

<19> 昭和五五年一月二九日午後六時ころ、池田、原告落合、原告糟谷ほか全石油名古屋支店分会員四名が、執務中の被告名古屋支店名古屋工業用製品支店内に無断で立ち入り、佐野支店長代理の机上、窓ガラス、天井などにビラを貼付したのみならず、同支店長代理に対し、「家でもどこでもついていくぞ、きょう決着をつけようじゃないか」などと脅迫した。

また、同日午後六時二五分ころ、佐野支店長代理が、仕事にならないこと及び身の危険を感じたため、他の被告会社監督者三名(荒木田武夫、秋野至孝、的場伸一)と寄り添うようにして帰宅しようとしたところ、被告名古屋支店玄関前付近で帰宅しようとした同支店長代理に身体をぶつけて出構を妨害し、駅に向かおうとした同支店長代理を池田、原告落合、原告糟谷ほか全石油名古屋支店分会員二名が取り囲んで「駅のホームでも、電車の中でもお前糾弾してやるぞ」などと脅迫し、赤信号の待時間の間、一般通行人に向かって「これがエッソの弾圧者の張本人だ」などと大声で叫び、更に原告落合は、危険を感じてタクシーに乗ろうとした同支店長代理らに対しその乗車を妨害し、開いたタクシーのドアとの間に身体を入れてタクシーの閉扉を阻止した。

池田は、全石油名古屋支店分会の委員長として、右各行為を企画、立案、指揮し、自ら率先して遂行した。(規則六二条四号、五号、一一号に該当)

(イ) 原告落合について

原告落合は、本件処分当時全石油名古屋支店分会の書記長であったところ、全石油名古屋支店分会は、本件処分までに被告の再三にわたる注意にもかかわらず、以下に記載のとおり、被告施設に対する違法なビラ貼り、業務妨害、被告の監督者に対する脅迫的言動等を繰り返してきた。

原告落合は、全石油名古屋支店分会の書記長として、右違法行為を企画、立案、指揮し、または自ら右違法行為に参加し、率先遂行してきた。

原告落合の右各行為は、いずれも正当な組合活動の範囲をはるかに逸脱した違法行為であり、規則六二条四号、五号、一一号に該当するものであるから、原告落合に対する本件処分は正当である。

<1> 原告落合は、全石油名古屋支店分会の書記長として、前記(ア)の<1>ないし<19>の各行為を企画、立案、指揮し、自ら率先して遂行した。(規則六二条四号、五号、一一号に該当)

<2> 昭和五四年四月一二日午前八時三五分ころから午前八時四五分ころにかけて、原告落合、原告糟谷ほか数名の全石油名古屋支店分会員が、出勤してきた藤岡課長に対して朝ビラの受け取りを強要し、同課長がこれを受け取らなかったところ、同課長のいる管理事務室まで乱入し、同課長に詰め寄って、口々に大声で「何を生意気いうか」等威圧的言辞を弄して同課長をつるし上げた。

原告落合は、全石油名古屋支店分会の書記長として、右各行為を企画、立案、指揮し、自ら率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)。

<3> 昭和五四年一〇月一九日午後零時二五分ころ、被告会社名古屋支店玄関付近でビラを貼付中の原告落合、原告糟谷ら全石油名古屋支店分会員が、これを止めるよう注意した藤岡課長に対し激しく詰め寄り、原告糟谷が、糊のついたビラを同課長の顔に近づけ、「顔にビラを貼るぞ」、「お前の家に押しかけたろか」、「殴ったろか」などと、原告落合が、「やかましい、争議中だぞ、殴ったろか」などと口々に怒鳴り散らし、同課長を暴力団員風に威圧した。

原告落合は、全石油名古屋支店分会の書記長として、右各行為を企画、立案、指揮し、自ら率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<4> 昭和五四年一二月三日午前九時二分ころ、被告会社名古屋工業用製品支店内において、原告糟谷が、就業時間中であるのにもかかわらず、佐野支店長代理に対し、同支店長代理が「暴力団みたいな・・・」と以前発言したことを捉え、同支店長代理の面前で「謝罪しろ」と大きな声でわめき散らしていたところ、それを聞きつけた原告落合が、被告の許可なく職場を離脱して同支店長代理の面前に駆けつけ、原告糟谷と一緒になって大声でわめき散らした。

原告落合は、全石油名古屋支店分会の書記長として、右各行為を企画、立案、指揮し、自ら率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<5> 昭和五四年一二月三日午前一〇時からの五分間指名スト時に、原告落合及び原告糟谷の二名が、被告会社名古屋工業用製品支店内に立ち入り、執務中の沖田支店長の前で、ハンドスピーカーを使用して暴力団云々のことをがなり立てた。同支店長は、原告落合らの右行為を制止、警告したが、原告落合らは全く止めようとせず、被告の業務の妨害を継続した。

原告落合は、全石油名古屋支店分会の書記長として、右各行為を企画、立案、指揮し、自ら率先して遂行した。(規則六二条五号、一一号に該当)

(ウ) 原告糟谷について

原告糟谷は、本件処分当時全石油名古屋支店分会の執行委員であったところ、昭和五四年二月一六日以降昭和五五年一月末日までの間、全石油名古屋支店分会員らとともにまたは原告糟谷自ら、被告の再三にわたる注意にもかかわらず、以下に記載のとおり、被告施設に対する違法なビラ貼り、業務妨害、被告の監督者に対する脅迫的言動等を繰り返してきた。

原告糟谷の右各行為は、いずれも正当な組合活動の範囲をはるかに逸脱した違法行為であり、規則六二条四号、五号、一一号に該当するものであるから、原告糟谷に対する本件処分は正当である。

<1> 原告糟谷は、全石油名古屋支店分会の執行委員として、前記(ア)の<1>ないし<10>及び<12>ないし<18>並びに前記(イ)の<2>ないし<4>の各行為を他の全石油名古屋支店分会員らとともに自ら中心となって遂行した。(規則六二条四号、五号、一一号に該当)

<2> 昭和五四年三月一六日午後五時二八分ころ、被告会社名古屋工業用製品支店内において、終業時間前である午後五時二八分に帰ろうとしていた原告糟谷は、終業時刻前の職場離脱を注意した沖田支店長に対し、「お前のいうことなんか聞くもんか」と大声で叫んだほか、「テメエも痛い思いをしないとわからんのか」などと脅迫的言動を弄しながら、そのまま帰宅した。(規則六二条五号に該当)

<3> 原告糟谷は、昭和五四年六月二〇日午後二時四二分ころ、管理事務所の入り口のドアを開けてその入り口に立ち、同事務所内で藤岡課長を始めとする他の従業員が執務中であるにもかかわらず、ハンドスピーカーを使用して「オイ」、「紳士面して・・・」などと大声で怒鳴り、同課長の注意に対しても、「もう一辺言ってみろ」、「ここへ来て土下座して止めてくれと言え」、「偉そうな顔をするな」などと粗暴な言辞を弄して被告の業務を著しく妨害した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<4> 原告糟谷は、昭和五四年九月二五日午後六時三〇分ころ、被告会社名古屋支店玄関前において、外部業者によるビラ清掃作業に立ち会っていた藤岡課長に対し、「お前がやれ、背広なんか着ていないで脱いでやれ、裸になってやれ、俺が水をかけてやるから裸になって剥がせ」などと非常識極まる言辞を弄した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<5> 原告糟谷は、昭和五四年一〇月一六日午後六時一八分ころ、被告会社名古屋支店内においてビラを貼付中の全石油名古屋支店分会員らにこれを止めるよう注意した被告会社監督者に対し、その耳元でハンドスピーカーを用いて怒鳴り、更に「決闘しよう」などと不穏当な言辞を弄しつつ同監督者に殴りかかる構えを繰り返した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<6> 昭和五四年一一月一九日午前九時五分ころ、被告会社名古屋工業用製品支店内において、沖田支店長が、三分間スト、五分間ストと称してルーズな短時間ストを実施する全石油名古屋支店分会員らに対して「ストライキは三分間だから時間どおりやるように」と注意したところ、原告糟谷は、同支店長に対し、「俺は掲示板を見ていたんだ。お前達の書いた掲示板だョォ。どこが悪いんだ。」などと大声でわめいた。(規則六二条五号、一一号に該当)

<7> 原告糟谷は、昭和五四年一二月三日午前一〇時からの五分間指名スト時に、原告落合とともに被告会社名古屋工業用製品支店内に立ち入り、執務中の沖田支店長の前で、ハンドスピーカーを使用して暴力団云々のことをがなり立てた。同支店長は、原告糟谷らの右行為を制止、警告したが、原告糟谷らは全く止めようともせず、被告の業務の妨害を継続した。

原告糟谷は更に、同日午前一〇時五分ころ、同支店長がハンドスピーカーを同支店内に持ち込まないよう指示したにもかかわらず、これを無視してハンドスピーカーを机上に置き、ところ構わず甚だしく粗暴な言辞を弄して右指示を拒否し続け、被告の業務を妨害した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<8> 原告糟谷は、昭和五五年一月七日午前九時からの三分間のスト中に、他の全石油名古屋支店分会員らとともに、被告会社名古屋工業用製品支店入口付近において、執務中の事務室内に向かい、ハンドスピーカーを使用して大声でがなり立て、著しく被告の業務を妨害したのみならず、同日午前九時三分すぎころ、「もう時間だからストを止めなさい」と注意した沖田支店長に対し、同事務所内において、「なにぶっ立ってるんだ、貴様」、「どかんかい」、「お前らブタじゃないか」、「ごめんなさいと言えよ」などと甚だしく粗暴な言辞を弄し、同日午前九時五分ころまで就労を拒否した。(規則六二条五号、一一号に該当)

<9> 原告糟谷は、昭和五五年一月二九日午後六時ころ、池田、原告落合ら全石油名古屋支店分会員とともに、執務中の被告名古屋支店名古屋工業用製品支店内に無断で立ち入り、佐野支店長代理の机上、窓ガラス、天井などにビラを貼付したのみならず、同支店長代理に対し、「家でもどこでもついていくぞ、きょう決着をつけようじゃないか」などと脅迫した。

また、同日午後六時二五分ころ、佐野支店長代理が、仕事にならないこと及び身の危険を感じたため、他の被告会社監督者三名(荒木田武夫、秋野至孝、的場伸一)と寄り添うようにして帰宅しようとしたところ、被告名古屋支店玄関前付近で帰宅しようとした同支店長代理に身体をぶつけて出構を妨害し、駅に向かおうとした同支店長代理を取り囲んで「駅のホームでも、電車の中でもお前糾弾してやるぞ」などと脅迫し、赤信号の待時間の間、一般通行人に向かって「これがエッソの弾圧者の張本人だ」などと大声で叫んだ。(規則六二条四号、五号、一一号に該当)

第三争点に対する判断

一  被告の本案前の主張について

1  前記争いのない事実に、成立に争いのない(証拠・人証略)並びに弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。

(一) 全石油中京分会連合会は、被告及びモービル石油株式会社の従業員によって組織された全国組織である全石油(本件処分当時は「ス労」の通称で呼ばれていた。)の下部組織のうちの一組織を構成し、独自の規約、議決機関、執行機関を有する労働組合であった。

また、全石油名古屋支店分会は、全石油中京分会連合会の下部組織の一つを構成し、被告名古屋サービスステーション支店、被告名古屋管理事務所、被告名古屋工業用製品支店に勤務する従業員によって組織され、独自の規約、議決機関、執行機関を備える労働組合であった。

(二) 被告の労働組合は、かつては全石油のみであったが、昭和四九年六月にエ労が結成され、次いで昭和五七年九月、全石油組合員に対する昭和五六年六月の東京地方裁判所の刑事事件判決及び同年九月の原告落合に対する配置転換命令に関する名古屋地方裁判所の仮処分決定についての対処の仕方、昭和五七年七月に被告から解雇の意思表示を受けた全石油大阪支部副委員長久保田幸一に対する支援等をめぐって全石油の組合員の間に意見の相違が生じ、これを契機として全石油は内部対立状態に陥った。

その結果、本訴提起後の昭和五七年九月二五日、原告落合及び久保田に対する支援等を従前どおり継続することを求める全石油の一部組合員は、全石油から脱退して自主労を結成した。

そして、自主労と運動方針を同じくしていた全石油中京分会連合会は、同年一〇月一四日、臨時大会を開き、方針を同じくする自主労に加盟することを決定するとともに、規約の一部を改正してその名称をそれぞれスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会に変更し、その際に数名の脱退者があったものの、全石油中京分会連合会の組合員の大部分がスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会の構成員となった。

同日、スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会は、自主労に加盟したこと及び以後の正式名称はスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会であることを被告に通告した。

同日、全石油中京分会連合会の下部組織であった全石油名古屋支店分会も、全石油中京分会連合会の自主労加盟とともに自主労に加盟し、その名称をスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会に変更し、全石油名古屋支店分会の組合員の全員がスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合名古屋支店分会の構成員となった。

2  以上の認定事実によれば、全石油中京分会連合会及び全石油名古屋支店分会は、いずれもその実態を変更することなく自主労に加盟し、それにともなって名称をスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会及びスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会に変更したものと見ることができるから、スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会及びスタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ名古屋支店分会は、いずれも訴訟手続上当事者追加または承継の手続きをとることなく名称の変更のみで本訴の当事者として訴訟を追行することができるというべきである。

したがって、全石油中京分会連合会及び全石油名古屋支店分会の本件訴えの却下を求める被告の主張はこれを採用しない。

二  そこで次に、被告の本案の主張について判断する。

1  前記争いのない事実に、成立に争いのない(証拠・人証略)の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。

(一) 池田は、本件処分当時、被告名古屋サービスステーション支店に勤務する従業員であり、原告分会の執行委員長の地位にあった。

原告落合は、本件処分当時、被告名古屋サービスステーション支店に勤務する従業員であり、原告分会の書記長の地位にあった。

原告糟谷は、本件処分当時、被告名古屋工業用製品支店に勤務する従業員であり、原告分会の執行委員でかつ全石油の本部副委員長の職を兼ねる地位にあった。

(二) 池田、原告落合らの主導の下に、原告分会は以下のとおりの行為をした。

(1) 原告分会員らは、昭和五四年二月一六日から昭和五五年一月末までの間、合計七〇回以上にわたり、「沖田・・・圧殺」などの内容のビラ、人名を黒枠で囲んだ内容のビラ等約一万枚にのぼるビラを被告の建物、備品その他の諸施設に貼付し、昭和五四年一一月二〇日以降のビラ貼付には、特殊化学糊(強力接着剤)を用いて、右ビラを容易に剥がすことが困難な状態とした。

原告分会員らは、その間被告から再三にわたり右のようなビラ貼付を止めるよう警告を受けていたが、その警告を無視してこれを継続していた。

(2) 昭和五四年二月一六日から昭和五五年一月末日までの間、原告落合、原告糟谷を含む原告分会の一部組合員は、連日にわたり就業時間中に「不当解雇撤回、二組解体」などと記載されたゼッケンを着用した。

被告は、右組合員に対し、就業中のゼッケン使用を止めるよう注意していたが、右組合員はこれを無視してゼッケン使用を継続した。

(3) 原告分会員らは、昭和五四年二月一九日以降昭和五五年一月末日までの間に二十数回にわたり、就業時間中の時限ストライキまたは就業時間前もしくは終了後の数分間ないし十数分間、被告名古屋支店内において、ハンドスピーカーで大声を出しながらデモ行進をし、また執務中の事務室内に向けてハンドスピーカーで大声を上げて被告名古屋支店の管理者個人に対する非難を叫ぶなどした。

原告分会員らは、被告から再三にわたり右のような行為を止めるよう警告を受けていたが、その警告を無視してこれを継続していた。

そのため、その間被告名古屋支店の業務は、原告分会員らの右行為による騒音のため、著しく支障を受けた。

(4) 原告分会員らは、昭和五四年四月一二日午後四時二〇分ころから、被告名古屋支店内をハンドスピーカーで大声を出しながらデモを行った。

その際、被告名古屋工業用製品支店の沖田支店長が、営業妨害をしないよう原告分会員らに注意しようとしてデモ隊の前に立ったところ、原告分会員らはこの制止を無視してデモ行進を進めて沖田支店長を押し返した。

また、右デモの際、原告分会員である増田民男は同支店入口から執務中の職場内に向かってハンドスピーカーで大声で叫び、原告落合は「正当な争議行為の結果として営業妨害が生ずるのは当然だ」などと叫ぶなどしたため、その間同支店の業務は、原告落合らの右行為による騒音のため、著しく支障を受けた。

さらに、その際原告糟谷は、沖田支店長に対し、「三里塚の仲間とともに戦うぞ。」などと叫んだ。

(5) 池田、原告落合、原告糟谷を含む原告分会員の多数は、昭和五四年六月七日午前八時二〇分ころから、名古屋支店ビルの玄関前の階段に立ちふさがってピケを張り、被告監督者らが執務のために被告名古屋支店ビル内に入館することを五分間ないし二〇分間にわたって妨害した。

その際、藤岡課長が就労の意思を表明して同支店ビルに入館しようとしたにもかかわらず、原告落合らは、同日午前八時二〇分ころから約一時間二〇分にわたって同課長に対して入館をあきらめるよう要求してその入構を物理的に阻止した。

(6) 池田、原告落合、原告糟谷を含む原告分会員数名は、昭和五四年六月一五日午前八時四五分ころ、被告名古屋支店ビル玄関前の階段中央部に座り込んでピケを張り、団体交渉のメンバーを除く被告監督者らの入構を妨害した。

(7) 原告糟谷を含む原告分会員らは、昭和五四年九月二一日午後五時三〇分ころ、団体交渉の日程、案件の確認のための事務折衝と称して沖田支店長室に無断で入り込み、同支店長に対して「さあ早く事務折衝をしろ」などとやかましく怒鳴り、その際一分会員は、「明日、沖田の家の周りで三里塚の仲間を連れて行ってわめいてやるぞ」などと同支店長を畏怖させるような発言を行った。

(8) 原告分会執行委員河合勝、増田民男及び原告糟谷は、昭和五四年九月二五日午前九時二〇分ころから四〇分ころまでの間、就業時間中に無断で職場を離脱したうえ、被告側事務折衝担当者であった名古屋工業用製品支店の佐野支店長代理に対し、その顔面一〇センチメートルくらいのところで「事務折衝を早くやれ。何を言っているんだ。」などと大声で怒鳴りながら事務折衝を行うよう要求し、池田及び原告落合は、途中からその場に来て、原告糟谷らの右行為に加担した。

(9) 原告分会員数名は、昭和五四年九月二五日午後六時ころ、執務中の被告名古屋支店工業用製品支店事務室内に無断で騒がしく立ち入り、同事務室内にビラを貼付した。

その際、右原告分会員らは、右ビラ貼り行為を注意し「執務中であり、業務の妨害となるから、外へ出て欲しい」と言った佐野支店長代理を取り囲んだうえ、「きさま、バカヤロー、ただではおかないぞ、きさまの家にも行ってビラを貼ってやるぞ」などと同支店長代理を畏怖させるような発言を行い、同日午後六時一五分ころまでの間多数の勢いをもって佐野支店長代理を厳しく責めた。

(10) 原告分会員らは、昭和五四年九月二六日午後五時五〇分ころ、原告分会のビラ貼付があまりにもひどいためこれを注意をした沖田支店長に対し、「争議中だから、会社の建物を汚す、壊すはあたりまえだ」などと発言してビラ貼付を続行した。

(11) 昭和五四年九月二八日午後六時二五分ころ、被告名古屋支店工業用製品支店事務室内において、佐野支店長代理と原告落合が事務折衝をしていたところ、池田を含む原告分会員多数が執務中の前記事務室内に無断で立ち入り、佐野支店長代理の退去勧告を無視して約一五分間にわたって大声で騒ぎ立てた。

さらに、右原告分会員らは、同日午後六時四〇分ころ、前記事務室から退出しようとした佐野支店長代理の前に立ちふさがり、ハンドスピーカーを佐野支店長代理の面前に突きつけたうえ、「名刺にサインしろ。おまえは帰るのか、バカモン。事務折衝を拒否するのか。」などの言葉を浴びせるなどして約五分間にわたりその通行を阻止した。

(12) 昭和五四年一〇月二九日午前八時五〇分ころ、池田、原告落合、原告糟谷を含む原告分会員多数が被告名古屋支店管理事務所窓ガラスにビラを貼付し始めたことから、藤岡課長がその状況を写真撮影したところ、池田らは藤岡課長のいる前記管理事務所に大挙して押しかけたうえ、「フィルムを返せ」などと叫びながら藤岡課長からカメラを奪おうとし、また藤岡課長をキャビネットに押しつけるなどして「バカヤロウ」などと叫び、さらに藤岡課長の机上、キャビネット、天井などにビラを貼付した。

(13) 昭和五四年一一月九日午後四時三〇分ころ、原告分会の多数の組合員は、原告連合会との団交の会場に沖田支店長らが出席しないことに抗議し、その場から退出しようとした佐野支店長代理に対し、沖田支店長らをその場に連れてくるよう要求し、ドアの前に立ちふさがる、押し戻す、後から抱きかかえるようにするなどして、その退出を阻止した。

(14) 昭和五四年一一月三〇日午後五時三五分ころ、池田、原告落合、原告糟谷を含む原告分会員多数は、被告名古屋支店工業用製品支店内に無断で立ち入り、執務中の社員の頭上の天井などにビラを貼付したため、被告の業務は支障を受けた。

その際、右原告分会員のうち、原告糟谷は、ビラを剥がそうとした沖田支店長の手をたたいてこれを阻止し、増田民男は、写真撮影した沖田支店長に顔面を極端に近づけて「フイルムを返せ」と怒鳴るなどした。

(15) 原告分会員らは、昭和五四年一二月七日午前八時五六分ころ、沖田支店長室に無断で立ち入り、佐野支店長代理の後記(三)の(4)の暴力団発言に抗議し、同支店長の耳元でハンドスピーカーでがなり立てるなどの行為を行った。

さらに原告分会員多数は、同日午後四時からの五分間ストライキに際し、被告名古屋支店名古屋工業用製品支店内に立ち入り、ハンドスピーカーでがなり立てる、ビラ貼付をするなどした。

そのため、その間同支店の業務は、原告落合らの右行為による騒音のため、著しく支障を受けた。

(16) 昭和五四年一二月二〇日午後六時ころ、原告分会員多数は、被告名古屋支店名古屋工業用製品支店入口付近にたむろし、右入口に糊の入った容器を置き、坐わり込むなどした。

しかし、被告監督者や従業員は、原告分会員らの脇を黙って通り過ぎて同支店を退出し、原告分会員らもこれを阻止しようとはしなかった。

(17) 昭和五五年一月二九日午後六時ころ、池田、原告落合、原告糟谷ほか原告分会員四名は、執務中の被告名古屋支店名古屋工業用製品支店内に無断で立ち入り、佐野支店長代理の机上、窓ガラス、天井などにビラを貼付したのみならず、同支店長代理に対し、「家でもどこでもついていくぞ、きょう決着をつけようじゃないか」などと同支店長代理を畏怖させるような発言を行った。

また、池田、原告落合、原告糟谷ほか原告分会員四名は、同日午後六時二五分ころ、佐野支店長代理が「団交を拒否しているのは組合の方である」旨の記載のある被告作成の書面を交付してきたことから、同支店長代理に対し、「組合が団交を拒否しているとはとんでもない、どういうことか」とこれに抗議し釈明を求めた。ところが、同支店長代理は、他の被告会社監督者三名(荒木田武夫、秋野至孝、的場伸一)と寄り添うようにして帰宅しようとしたことから、池田、原告落合、原告糟谷ほか原告分会員四名は、被告名古屋支店玄関前付近で帰宅しようとした同支店長代理に身体をぶつけてその出構を妨害し、池田、原告落合、原告糟谷ほか原告分会員二名は、駅に向かおうとした同支店長代理を取り囲んで「駅のホームでも、電車の中でもそんなでたらめを言うお前なんか糾弾してやるぞ」などと同支店長代理を畏怖させるような発言をし、赤信号の待時間の間、一般通行人に向かって「これがエッソの弾圧者の張本人だ」などと大声で叫んだ。

さらに原告落合は、タクシーに乗ろうとした同支店長代理らとともに同じタクシーに乗り込もうとして、同支店長代理らが乗車したタクシーの後部座席に一旦身体を入れたが、同支店長代理が降車するよう求めたため、まもなくそのタクシーから降車した。

(三) 原告落合、原告糟谷は、原告分会員らとともに以下の行為をした。

(1) 昭和五四年四月一二日午前八時三五分ころから午前八時四五分ころにかけて、被告名古屋管理事務所に出勤してきた同事務所管理課の藤岡課長に対して朝ビラの受け取りを要求し、同課長がこれを手で払いのけながらビラの受け取りを拒否したところ、同課長のいる管理事務室まで入り込んで同課長に詰め寄り、口々に大声で「何を生意気いうか」などと叫んで同課長がビラの受け取りを拒否したことを厳しく責めた。

(2) 昭和五四年九月以降昭和五五年一月ころまでの間、被告が原告分会員らによって被告施設に貼付されたビラの清掃作業を行っていた際、しばしば就業時間中に無断で職場を離脱し、清掃をしている被告監督者に対してハンドスピーカーで大声で嫌がらせを言ったりして右清掃作業を妨害した。

(3) 昭和五四年一〇月一九日午後零時二五分ころ、被告会社名古屋支店玄関付近で原告分会員らとともにビラを貼付中の原告落合、原告糟谷は、これを止めるよう注意した藤岡課長に対し激しく詰め寄り、その際、原告糟谷は、糊のついたビラを同課長の顔に近づけながら「顔にビラを貼るぞ」、「お前の家に押しかけたろか」などと怒鳴り、同課長を威圧した。

(4) 昭和五四年一一月三〇日午後六時ころ、被告名古屋支店二階廊下において、沖田支店長がビラ貼付中の原告分会員らにビラ貼りを止めるよう注意するとともにビラを目の前で剥がしたことから、これに抗議して同支店長に対し、「俺の後のビラをはがしてみろ、テメエは痛い思いをしないと判らんのか。コンカイ」などと大声で叫びながら同支店長を挑発、威圧した。

さらにその際、佐野支店長代理が「沖田さん、暴力団みたいなのと言い争いをするのは止めましょう。」と発言したことから、原告落合、原告糟谷らは、「暴力団呼ばわりは許せない」とその発言に抗議し、「明日家に行って談判する」などと叫びながら、沖田支店長からの再三の退去警告を無視して、同日午後九時一五分に至るまで、同支店廊下及び名古屋工業用製品支店内に滞留し続けた。

(5) 昭和五四年一二月三日午前九時二分ころ、被告会社名古屋工業用製品支店内において、原告糟谷は、就業時間中に、佐野支店長代理に対し、同支店長代理の右暴力団発言を捉え、同支店長代理の面前で「謝罪しろ」と大きな声で抗議を繰り返し、それを聞きつけた原告落合も、被告の許可なく職場を離脱して同支店長代理の面前に駆けつけ、原告糟谷と一緒になって大声で抗議を繰り返した。

これに対し、沖田支店長が原告落合らに対し、職場離脱であるから自席に戻るよう命じたことから、原告落合らはまもなく佐野支店長代理の席を離れて自席に戻った。

(6) 昭和五四年一二月三日午前一〇時からの五分間指名スト時に、被告会社名古屋工業用製品支店内に立ち入り、執務中の沖田支店長の前で、佐野支店長代理の前記(4)の暴力団発言に抗議し、ハンドスピーカーを使用して「暴力団発言糾弾」、「団交拒否糾弾」などと大声で叫び続けた。

同支店長は、原告落合らの右行為を制止、警告したが、原告落合らはこれを無視して抗議を続けたことから、その間同支店の業務は、原告落合らの右行為による騒音のため、著しく支障を受けた。

(四) 原告糟谷は、原告分会員として、原告分会による前認定の(二)の(1)ないし(9)及び(11)ないし(17)(ただし、第三段を除く。)の行為に積極的に加わって行動し、また原告落合とともに前認定の(三)の(1)ないし(6)の行為をしたほか、以下の行為をした。

(1) 昭和五四年三月一六日午後五時二八分ころ、被告会社名古屋工業用製品支店内において、終業時刻二分前である午後五時二八分に席を立って帰ろうとし、沖田支店長が終業時刻前である旨を注意したところ、これに対し、「お前のいうことなんか聞くもんか」と大声で叫んだほか、「テメエも痛い思いをしないとわからんのか」などと同支店長を畏怖させるような発言をしながら、そのまま帰宅した。

(2) 昭和五四年九月二五日午後六時三〇分ころ、被告会社名古屋支店玄関前において、外部業者によるビラ清掃作業に立ち会っていた藤岡課長に対し、「お前がやれ、背広なんか着ていないで脱いでやれ、裸になってやれ、俺が水をかけてやるから裸になって剥がせ」などと発言した。

(3) 昭和五四年一一月一九日午前九時五分ころ、被告会社名古屋工業用製品支店内において、沖田支店長が、三分間スト、五分間ストと称してルーズな短時間ストを実施する原告分会員らに対して「ストライキは三分間だから時間どおりやるように」と注意したところ、原告糟谷は、同支店長に対し、「俺は掲示板を見ていたんだ。お前達の書いた掲示板だよ。どこが悪いんだ。」などと大声で叫び、執務の妨げとなる行為をした。

(4) 昭和五五年一月七日午前九時からの三分間のストの終了した同日午前九時三分すぎころ、「もう時間だからストを止めなさい」と注意した沖田支店長に対し、同事務所内において、「なにぶっ立ってるんだ、貴様」、「どかんかい」、「お前らブタじゃないか」、「ごめんなさいと言えよ」などと暴言を発し、同日午前九時五分ころまで就労を拒否した。

(五) なお、原告糟谷は、原告分会員として前認定の(二)の(3)の行為に加わった際、以下のとおり積極的行為をした。

(1) 昭和五四年六月二〇日午後二時四二分ころ、管理事務所の入り口のドアを開けてその入り口に立ち、同事務所内で藤岡課長を始めとする他の従業員が執務中であるにもかかわらず、ハンドスピーカーを使用して「オイ」、「紳士面して・・・」などと大声で怒鳴り、同課長の注意に対しても、「もう一辺言ってみろ」、「ここへ来て土下座して止めてくれと言え」、「偉そうな顔をするな」などと発言した。

その間、同事務所における業務は、原告糟谷の右行為による騒音のため、著しく支障を受けた。

(2) 昭和五四年一〇月一六日午後六時一八分ころ、被告会社名古屋支店内においてビラを剥がす作業をしていた佐野支店長代理に対し、その耳元でハンドスピーカーを用いて怒鳴り、更に「決闘しよう」などと言いながら同監督者に殴りかかる構えを繰り返した。

(3) 昭和五四年一二月三日午前一〇時五分ころ、沖田支店長がハンドスピーカーを被告会社名古屋工業用製品支店内に持ち込まないよう指示したにもかかわらず、これを無視してハンドスピーカーを机上に置き、乱暴な発言を繰り返して右指示を拒否し続け、被告の業務を妨害した。

2  以上の認定事実によれば、被告が池田に対する本件処分の理由として主張する事実のうち、前記(二)の(1)ないし(15)、(17)の各行為、被告が原告落合に対する本件処分の理由として主張する事実のうち、前記(二)の(1)ないし(15)、(17)及び(三)の(1)ないし(6)の各行為、被告が原告糟谷に対する本件処分の理由として主張する事実のうち、前記(二)の(1)ないし(9)、(11)ないし(15)、(17)(ただし、第三段を除く。)の原告分会の行動に加わってした行為並びに(三)の(1)ないし(6)、(四)の(1)ないし(4)及び(五)の(1)ないし(3)の各行為は、いずれも正当な組合活動または争議行為の範囲を逸脱した違法行為といわざるを得ないものであり、規則六二条四号又は五号若しくは一一号に該当するというべきであり、その余の事実については右規則に該当するものとは認め難い。

なお、原告落合及び原告糟谷のした右(三)の(6)の行為並びに原告糟谷のした右(五)の(1)ないし(3)の行為は、原告落合及び原告糟谷が原告分会員として右(二)の(3)の行為に加わった際になされたものであると認められるから、右行為の全てが右規則に該当すると評価することは、(三)の(6)の行為及び(五)の(1)ないし(3)の行為を二重に評価したことになり許されないことは当然である。したがって、右(二)の(3)の行為については、同行為の中から(三)の(6)の行為及び(五)の(1)ないし(3)の行為を除いた残余の行為につき評価したものである。

三  ところで、原告らは、本件処分は、原告らの労働組合活動を嫌悪し、これに打撃を与えることを主たる目的としてなされた不当労働行為であると主張するので、この点について検討する。

1  前記争いのない事実、前記認定事実に、前掲各証拠、成立に争いがない(証拠略)並びに弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。

(一) 被告は、昭和四九年ころから全石油に対し強硬な対決姿勢をとるようになり、同年六月二八日にエ労が結成された後は、エ労も全石油と激しく対立して、全石油の組合員とエ労組合員及び被告管理職員らとの間に暴力をも伴うトラブルが発生するようになった。

その経過の中で、昭和五一年四月一九日及び同月二〇日、全石油エッソ本社支部三役と本部専従書記ら五名が、被告職制、エ労幹部及びガードマンらに暴力を振ったなどの容疑で逮捕され、被告は、同年六月七日、この暴力事件を理由として全石油エッソ本社支部三役四名に対し、懲戒解雇の意思表示をした。

これに対し、全石油は、右暴力事件が被告及び工労が全石油を攻撃するために作り上げた虚構の事件であると主張して激しく反発し、全石油エッソ本社支部三役に対する懲戒解雇の白紙撤回要求を始めとして、同年九月なされた原告連合会及び原告分会の組合員五名に対する配置転換白紙撤回要求、原告連合会及び原告分会の組合員に対する人事評定、賃金の差別的取扱の白紙撤回要求などを全石油の主たる運動目標として、全石油の全組織を動員し、被告に対し、団体交渉、ストライキなどの争議行為をもって激しく抵抗した。

(二) 被告名古屋支店においては、昭和五三年七月ころまで、一か月約二回のペースで被告と原告分会との間の団体交渉が開かれていたが、同年八月以降被告が原告分会との団体交渉に消極的な姿勢を示したことから、原告分会と被告との間の労使関係は紛糾し、同年一二月八日を最後に団体交渉は開かれなくなった。

これに対し、原告分会は団体交渉を要求するストライキで対抗し、被告がこれに対する警告を行うなど、労使関係はますます険悪化したが、昭和五四年三月一五日に開催された団体交渉において、被告と原告分会との間の団体交渉開催のルールが確認され、またこれに引き続いて行われた数回の団体交渉の中で、被告側交渉担当者がこれまでの原告分会との労使慣行を尊重する旨明らかにしたことから、同年八月ころまでの間は、被告と原告分会との間で精力的に団体交渉がもたれ、労使関係は改善するかに見えた。

しかし、同年九月七日に行われた被告と原告分会との団体交渉において、被告側代表者である沖田支店長が途中で突然席を立って団体交渉を打ち切り、それ以降再び被告が原告分会との団体交渉の再開に消極的姿勢を示したことから、労使関係は再び紛糾した。

(三) 昭和五四年九月七日以降、被告と原告連合会及び原告分会との団体交渉は開かれず、これに反発した原告分会組合員は、被告側に対し、団体交渉の再開を求め、ビラ貼り、時限ストライキなどで対抗し、また、被告側事務折衝担当者に対し、団体交渉の再開を求めて激しく詰め寄り、その経過の中で、前記二の1の(二)の(7)ないし(17)、(三)の(2)ないし(6)、(四)の(2)(3)(4)、(五)の(2)(3)に認定の事実が発生した。

(四) 昭和五五年一月二九日、被告は、原告分会に対し、書面で原告分会との団体交渉を再開したい旨を表明してきた。

右書面には、原告分会が「団体交渉におけるルール」を遵守することを誓約するならば、被告は速やかに団体交渉に応じる用意があることを確認するものであり、被告が主張する「団体交渉におけるルール」とは、<1>発言は一人ずつ行い、発言中は相手の話を聞くこと、<2>相手の立場を認め、呼び捨てにしないこと、<3>詰問的口調で吊るし上げたり、脅迫的言動をしないこと、<4>会社と組合の立場で話し合い、個人の誹謗、中傷をしないことの四点であった。

原告分会は、被告の提出した右書面に対し、「右書面は団体交渉が開かれない責任をすべて原告分会側に押しつけるものであって容認できない」旨直ちに反論したが、被告の右申し入れに応じたことから、同年二月五日及び同月一二日、被告と原告分会との間の団体交渉が約四か月ぶりに開催され、この場において、原告分会側からの要求事項の整理や、今後の団体交渉の進め方について協議が行われた。

(五) 右団体交渉の三日後の昭和五五年二月一五日、被告から本件処分が明らかにされた。

2  以上の認定事実によれば、被告としては、本件処分以前から、原告分会の存在並びにその運動方針及び労働運動に対しては毅然とした対応をとっていたこと、名古屋支店においても、右のような会社の方針の下に原告連合会及び原告分会に対応していたが、その態度は必ずしも一貫せず、同支店の組合に対する会社代表者が代わるたびに原告分会に対する姿勢には揺れがあったことが認められ、これらの点に照らすと、被告としては、原告分会の存在及び労働運動に対して、相当の危機感及び嫌悪感をもっていたことは窺われる。

しかし、前掲各証拠によれば、被告が原告連合会及び原告分会との団体交渉に対して消極的態度をとったのは、団体交渉における原告連合会及び原告分会組合員の乱暴な言葉使いや粗暴な態度に被告側交渉担当者が耐え難い憤りを持ったためであって、被告側の交渉担当者の原告分会に対する対応に一貫性を欠き一部不誠実な言動があったことが認められるとしても、その心情は一般常識からみて十分に理解できる(昭和五五年一月二九日に被告が原告分会に対して提示した「団体交渉のルール」は、団体交渉に臨む当事者が守るべき事項としてはいずれも当然の内容というべきである。)というべきである。

また、前記二の1において認定した事実(ただし、(二)の(16)を除く。)は、その行為態様からみて、その行為が前記認定のような具体的事情の下で、原告分会の組織的集団行動の一環として争議行為またはそれに準ずる行動として行われたものであるという事実を考慮しても、法秩序全体の見地から正当な労働運動として許容できないものであることは明らかである。

したがって、池田、原告落合及び原告糟谷らの行った前記二の1に認定の行為(ただし、(二)の(16)を除く。)は、その行為者が原告分会の組合員であるかどうかに関わらず、被告としては企業の秩序の維持の見地から当然出勤停止を含む懲戒処分の対象とすることが許容される行為であるというべきであり、その懲戒処分が原告分会の組合員であった池田、原告落合及び原告糟谷らになされたからといって、被告の原告分会に対する前記危機意識や嫌悪感と本件処分との間に相当因果関係が存在するとは認め難く、他に右事実を推認するに足りる証拠は存在しない。

3  以上のとおり、本件処分が原告らの労働組合活動を嫌悪し、これに打撃を与えることを主たる目的としてなされた不当労働行為に該当するものと推認することは困難であり、原告らの前記主張は採用することはできないといわなければならない。

四  前記認定事実及び前掲各証拠に照らすと、規則六二条四号又は五号若しくは一一号に該当する前記各事実は、被告の企業の秩序を乱し、その業務に少なからぬ支障を及ぼしたことが認められるから、その情状は軽くないといわざるを得ず、池田、原告落合及び原告糟谷らになされた本件処分はいずれも相当というべきであり、また本件全証拠によっても、本件処分手続に違法と目すべき事情は見当たらないから、本件処分の無効を理由とする原告らの請求は、いずれも理由がない。

五  結論

以上のとおり、原告らの本訴請求はすべて理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 福田晧一 裁判官 潮見直之 裁判官 黒田豊)

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